7264 ≪黄金の指紋≫

画像

≪黄金の指紋≫

角川文庫
角川書店 1978年12月/初版 1996年8月/28版
横溝正史 著

  三島市立図書館の書庫にあった本。 同じ、1996年8月に出た角川文庫でも、≪迷宮の扉≫では、カバー裏表紙に、内容説明が書いてあったのに、この本では、従来の角川文庫のように、カバーの表紙側の折り返し部分に、内容説明が書いてあります。 どう違うのか、理由が分からない。 

  ≪迷宮の扉≫同様、解説が、中島河太郎さんではないので、作品データが分かりません。 ネット情報では、1951年6月から、1952年8月まで、「譚海」に連載されたとの事。 約228ページの長編1作を、収録しています。 タイトルや、表紙絵から、何となく分かりますが、少年向け、つまり、ジュブナイルでして、大人向けだと思って読み始めると、肩すかしを食います。


  瀬戸内海で船が難破し、岸に流れ着いた青年から、ある人物の指紋が焼き付けられた黄金の燭台を託された少年が、青年の指示に従い、金田一耕助に燭台を送り届けようとするのを、二つのグループが、つけ狙う。 同時に、指紋の主である、元侯爵の孫娘の身柄を巡って、金田一耕助と警察が、怪獣男爵と、丁々発止の騙し合いを繰り広げる話。

  推理小説というより、冒険活劇です。 金田一と等々力警部が出て来るのが、違和感を覚えるくらい。 特に、金田一は、江戸川乱歩の少年探偵団物に於ける、明智小五郎と似たような、というか、それ以上に、活動的な役割を振られており、ピストルまで持って、体を張った活躍をします。 大人向け作品に出てくる金田一とは、全然、イメージが合いません。

  金田一が活躍する一方、燭台を託した青年や、託された少年も、重要人物として、全編で活躍し続けます。 敵も多けりゃ、味方も多い。 その結果、ストーリーには、バラバラ感が強烈ですが、何と言っても、少年向け作品だから、勢い任せで、出たとこ勝負的に、書き飛ばしたのだと思います。 こういう作品に、リアリティーを求めても、仕方がない。 怪獣男爵に至っては、もはや、SFですから。

  ささやかな事ですが、作中に、新幹線が出てきます。 しかし、1951-52年に書かれたのだとしたら、新幹線は、まだ、ありません。 いかに、ネット情報が信用ならないとはいえ、発表が、10年以上ズレるとは思えないので、新幹線が開業した、1960年代半ば以降に、一度、手直しされているのかも知れません。

  こういう作品も、文庫本になって、28版も重ねたという事は、横溝さんの作品なら、どんなものでも読みたいという読者が多かったんでしょうねえ。 名前が売れていない作家になると、まるで売れず、第2版すら出ない場合もありますから、28版というのが、どういう売れ方をしたかが、分かると思います。