7229 ≪人面瘡 【金田一耕助ファイル6】≫

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≪人面瘡 【金田一耕助ファイル6】≫

角川文庫
角川書店 1996年9月25日/初版 2008年1月30日/24版
横溝正史 著

  三島市立図書館にあったもの。 書庫ではなく、開架にありました。 角川文庫ですが、1990年代になって、「金田一耕助ファイル」として、再編された本。 表紙は、絵ではなく、書です。 文字は、「面」。 長編は、一冊一作品だから、変わりはないですが、短編集は、再編されると、収録作品が変わり、ややこしくなります。

  長編1、中編2、短編2の、計5作を収録。 内、【睡れる花嫁】は、≪華やかな野獣≫に、【蜃気楼島の情熱】は、≪びっくり箱殺人事件≫にも収録されていて、それらの時に感想を書いてあるので、書きません。


【湖泥】 約106ページ
  1953年(昭和28年)1月、「オール読物」に掲載。 挑戦形式の作品で、推理ファンの三氏が解決部分を推理するという企画だったとの事。

  岡山の山村にある二つの旧家が、息子の嫁にと取り合っていた若い娘が行方不明になり、捜索を経て、湖畔の小屋から暴行を受けた死体が発見される。 小屋に住んでいる男は、暴行は認めたが、殺害はしていないという。 続いて、村長の妻が、やはり、死体で発見される。 若い娘が義眼を入れていた事を手がかりに、金田一が、殺害時刻当時の関係者のアリバイを崩して行く話。

  旧家の争いは、定番のパターン。 しかし、その設定は、殺人事件のそのものとは、直接関係していません。 旧家の争いという設定がなくても、成り立つ話です。 殺人が二つ起こる上に、容疑者が複数で、よくよく注意して読まないと、誰がどう怪しいのか、見失ってしまいます。

  実は、この作品、私の手持ちの本、≪貸しボート十三号≫にも収録されていて、二回くらい読んでいるのですが、冒頭の、湖の上での捜索場面と、死姦された若い娘の死体というのが、ビジュアル的に印象に残っていて、後ろの方は、すっかり、忘れていました。 ややこし過ぎて、記憶できなかったのだと思います。

  古谷一行さんの主演でドラマ化されているそうですが、私は、未見。 「死姦された若い娘の死体」というのは、映像にしたんですかね? テキトーに、ぼかしたとは思うんですが。 事件の中身は複雑なので、2時間もたせる事は可能だと思いますが、やはり、分かり難いのでは?
  

【蝙蝠と蛞蝓】 約30ページ
  1947年(昭和22年)9月、「ロック」に掲載。

  あるアパートに住む男が、隣に越して来た金田一耕助を、「蝙蝠」と呼び、裏に住んでいる女を、「蛞蝓」と呼んで、どちらも嫌っていた。 ある時、戯れに、裏の女を殺し、その罪を金田一に被せてしまうという小説を書いたが、その後、本当に女が殺されてしまって・・・、という話。

  ほんの小品ですが、金田一が登場して間もない頃の作品であるせいか、洒落が利いていて、読んでいて、楽しい気分になります。 事件の方は、全く、どうという事はないです。 些か、江戸川乱歩さんの短編っぽいかも。


【人面瘡】 約88ページ
  作品データ不明。 この本、角川文庫ですが、90年代になって、再編されたシリーズなので、解説がついていません。 おそらく、旧シリーズを見れば分かると思うのですが、行ける範囲の図書館には置いてない模様。

  岡山の湯治場で、夢遊病の気がある女中が、「妹を二度殺した」という遺書を書いて、自殺を図る。 その脇の下には、人面瘡があった。 やがて、その妹が、近くの淵で、死体となって発見される。 磯川警部と静養に来ていた金田一が、姉妹の過去を調べ、妹を殺した犯人と、人面瘡の謎を解く話。

  以下、ネタバレあり。

  この、妹というのが、曲者でして、まあ、殺されても仕方がないような輩。 事件は、シンプルなもので、話の中心は、その湯治場に流れて来るまでの姉妹の過去にあります。 空襲で焼け出されたドサクサに、身元を隠して、第二の人生を歩み出すというパターンは、日本の推理小説では、よく使われますねえ。

  人面瘡の方は、科学的な説明が施されています。 しかし、それはそれで、気味の悪い話でして、むしろ、ただの皺だった方が、まだ救われる感じがします。