7453 ≪横溝正史探偵小説選 Ⅴ≫

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≪横溝正史探偵小説選 Ⅴ≫

論創ミステリ叢書100
論創社 2016年7月/初版
横溝正史 著

  沼津市立図書館の書庫にあった本。 「論創ミステリ叢書」の、「横溝正史探偵小説選 」は、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲと、続き番で出た後、かなり時間を置いて、Ⅳ、Ⅴが出ました。いずれも、単行本や文庫本に収録されいなかった作品を、落ち穂拾いしたもの。 Ⅳは、時代小説だけのようなので、パス。 Ⅴを借りて来ました。


【探偵小僧】 約217ページ
  1952年(昭和27年)2月から、翌年4月まで、「読売新聞」と「同夕刊」に跨って連載されたもの。 

  新日報社の探偵小僧、御子柴進と、敏腕記者、三津木俊助が、宝石を狙う白蝋仮面を相手に、騙し騙され、活劇を演じる話。

  横溝さんの少年向け作品のパターンに則った話。 挿絵入りのせいで、長くなっています。 白蝋仮面ですが、この話では、怪盗らしい、キレを見せています。 しかし、大人が喜ぶような作品ではないです。 これが、新聞に連載されたというのは、かなり、意外。


【仮面の怪賊】 約12ページ
  1931年(昭和6年)6月、「少年倶楽部」に掲載されたもの。 

  宝石を狙う、道化仮面を、保科探偵とその助手、そして、警視庁の篠崎警部が捕えようとする話。

  少年向けですが、スマートに纏まっていて、大人が読んでも、さほど、違和感を覚えないと思います。


【王冠のゆくえ】 約9ページ
  1955年(昭和30年)1月、「幼年クラブ増刊号」に掲載されたもの。 

  病気の母親をもつ女の子と、その友達の男の子二人が、賞金を病院代に当てる為に、宝石店から盗まれた王冠を捜す話。

  雪達磨が鍵になる、割とよくある謎ですが、幼年向けなので、それで、充分。 ハッピー・エンドだから、大人が読んでも、読後感はいいです。


【十二時前後】 約4ページ
  1955年(昭和30年)10月と、12月、「中学生の友」に、問題編・解答に分けて、掲載されたもの。 

  校長室から、試験用紙が盗まれ、寄宿舎の生徒が疑われる。 目撃者が見た時計の針の位置で、アリバイが崩される話。

  これも、横溝作品では、よくある謎。 横溝さんは、子供が相手の作品だと、幼年向けでも、中学生向けでも、同レベルの謎を使うんですな。 中学生向けとしては、かなり、読者をナメていると思います。


【博愛の天使 ナイチンゲール】 約14ページ
  1928年(昭和3年)4月、「少年少女譚海 譚海別冊読本」に掲載されたもの。

  ナイチンゲールと、その幼馴染が、クリミア戦争の戦場で出会う話。

  探偵小説ではないです。 ただの、偉人物語。 横溝作品にしては、あまりにも、捻りがない。 編集者から、「こういうのを書いてください」と、かなり、内容を限定された注文を受けたのではないかと思います。


【不死蝶 雑誌連載版】 約65ページ
  1953年(昭和28年)6月から11月にかけて、「平凡」に連載されたもの。

  内容は、【不死蝶】と同じです。 その原型に当たります。 こちらの方が、話が単純になっている分、無駄がなく、完成度は高いです。 ロミオとジュリエット型のカップルが、何組も出てくるような事もありません。 書き直した方がよくなるわけではないという典型例。


【女怪】 約63ページ
  1927年(昭和2年)11月から、翌年にかけて、「探偵趣味」に連載されたもの。

  複数の男が、ある謎の女の素性を調べる話。

  未完作品でして、途中で終わってしまいます。 文体は、探偵小説というより、大衆小説のそれで、やたら、描写が細かくて、辟易します。 金田一物の、【女怪】とは、全く別物で、重なる所は、一ヵ所もないです。


【猫目石の秘密】 約7ページ
  1927年(昭和2年)7月、「少女世界」に掲載されたもの。

  少女が持っている猫目石を、不審な男が狙う話。

  未完作品。 ページ数を見ても分かる通り、始まったと思ったら、終わってしまいます。


【神の矢】 約35ページ
  1949年(昭和24年)1月から数回、「ロック」に掲載されたもの。 

  復員してきた三津木俊助が、友人に信州のある村へ招かれる。 その村で起こっている、脅迫事件に関って行く話。

  おそらく、完成していれば、由利・三津木コンビ物の、最終作品になったと思われるもので、戦前作品とは比較にならないくらい、細かい設定が施されており、それだけで、ゾクゾクするものがあるのですが、惜しむらく、御神体の矢が盗まれるところで、終わってしまいます。

  もはや叶わぬ望みですが、「この続きが読めたらなあ」と、歯噛みせずにはいられません。 もっとも、たぶん、この作品用に考えていた展開を、【毒の矢】、【黒い翼】、【白と黒】など、脅迫・密告がモチーフの作品に流用して行ったのだと思うので、大体、想像がつかないではないですが。


【失はれた影】 約39ページ
  1950年(昭和25年)1月から数回、「ホープ」に掲載されたもの。

  整形手術で顔を変えた男が、名前も新しくして、何かをしようとする話。

  これ以下は考えられないほど、テキトーな梗概ですが、実は、冒頭しか読んでいません。 主人公が、ゴロツキが集まるようなところへ行ってから、そこの描写が、ダラダラと続き、読むに耐えなくなったのです。 いずれにせよ、未完なので、最後まで読んでも、意味はないです。


  【女怪】から、【失はれた影】までの4作は、未完なのですが、理由は、途中で、雑誌が潰れてしまうとか、横溝さんの健康状態が悪化して、続けられなかったとか、そういう事だったらしいです。