7474 ≪髑髏検校≫

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≪髑髏検校≫

角川文庫
角川書店 1975年6月10日/初版 1976年3月10日/4版
横溝正史 著

  2019年5月に、ヤフオクで、角川文庫の横溝作品を、18冊セットで買った内の一冊。 角川文庫の横溝作品に、「髑髏検校」というタイトルの本が存在するのは、1995年頃から知っていたのですが、時代小説のようだったので、読む気になりませんでした。 漠然と、江戸時代の役人が探偵役を務める、推理小説だと思っていたのですが、読んでみたら、完全な勘違いでした。


【神変稲妻車】 約262ページ
  1938年(昭和13年)に、一年間、「譚海」に連載されたもの。

  田沼山城守が、信州高遠の新宮家に、家宝の名笛を譲るように強いた事から、互いに共鳴する三本の笛と、隠された財宝を巡って、新宮家の家臣と、かつて新宮家に滅ぼされた大和家の老姫一派が、相争う話。

  テキトーな梗概ですが、この程度で充分な内容です。 この作品自体が、テキトーに書き飛ばしたもので、まともな評論の対象とするようなものではないのです。 まず、主人公がはっきりしない。 話があっちに行ったり、こっちに飛んだり、およそ、落ち着きというものがありません。

  次に、ワン・パターン。 その時の中心人物が、危機に陥り、何とか乗り越え、の繰り返しばかりです。 最終的には、善玉が勝つというだけで、それまでは、悪玉がやりたい放題。 ムカムカするばかりで、面白さを感じません。 とどめが、妖術でして、妖術を出したら、何でもアリになってしまいます。

  「譚海」という雑誌は、元々は、少年向けだったようで、そのカテゴリーで書いたというのなら、なるほど、こうもなるかと頷けます。 そういえば、【神変竜巻組】も、少年向けでした。 テンポだけは、調子よく、中身が空っぽという点も、同類です。


【髑髏検校】 約147ページ
  1939年(昭和14年)1・2月に、「奇譚」に分載されたもの。 「どくろけんぎょう」と読みます。

  獲れた鯨の腹の中から、書付が出て来て、「不知火検校」と名乗る怪人物が、将軍家の姫を狙って、江戸へ向かった事が伝わる。 襲われて、血を吸われた人物が、また別の者を襲う連鎖が始まったのを、学者・鳥居蘭渓と、その一門が、ニンニクを武器に、必死に食い止めようとする話。

  ほぼ、「ドラキュラ」と同じアイデア。 翻案なんでしょう。 だけど、軽い場面転換ばかりがポンポンと進み、細部を描き込んでいないので、読み応えは、全然ありません。 推理小説的な部分は、皆無です。 草双紙的な要素を盛り込み過ぎて、吸血鬼のモチーフを活かしきれない感あり。

  とはいえ、「譚海」の後を継いだ「奇譚」という雑誌は、大人向けだったそうで、確かに、【神変稲妻車】に比べると、こちらの方が、まだ、読めるように思えます。 横溝さんは、とことん、少年向けと、大人向けを、書き分けていたようですな。