7320 ≪横溝正史探偵小説選 Ⅲ≫

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≪横溝正史探偵小説選 Ⅲ≫

論創ミステリ叢書37
論創社 2008年12月/初版
横溝正史 著

  三島市立図書館の書庫にあった本。 「論創ミステリ叢書」で、「横溝正史探偵小説選 Ⅰ」、「Ⅱ」と、続き番で、出版されたもの。 解説を除いても、約626ページもあります。 「創作」が、16作で、内2作が、長編。 他は、短編。 「評論・随筆」が、24作ありますが、どれも、短いもの。 「Ⅰ」「Ⅱ」と同様、一作ごとの感想は書きません。


  現代ものは、6作で、全て、戦後発表。 少年向け作品で、三津木俊助・御子柴進ものが、3作あり、内、【鋼鉄魔人】は、「Ⅱ」に収録されている、ノン・シリーズの【魔人都市】を三津木俊助・御子柴進ものに書き換え、長編化したもの。 前半のストーリーは、ほとんど同じですが、後半、変わって来ます。

  「幼年クラブ」や、「幼年ブック」という雑誌が存在していたようで、それ向けに書かれた作品が、3作あります。 平仮名ばかりで、読み難いですが、短いから、読み始めれば、すぐに終わります。 他の作品で使った謎やトリックを流用したものが多いです。 幼年が相手では、焼き直しも、問題になりますまい。

  時代小説が、10作あり、大人向けと少年向けが混在しています。 大人向けは、人形佐七が登場する推理クイズの【お蝶殺し】を除いて、全て、戦前作品。 少年向けは、全て、戦後作品。

  少年向けの内、遠山の金さんの息子を探偵役にした、智慧若物が3作。 他は、ノン・シリーズです。 解説によると、大抵の作品が、後に、人形佐七シリーズに書き改められているそうです。 出版社側の事情もあると思いますが、横溝さん本人としては、後世に残す時代小説作品を、佐七シリーズで統一しておきたかったのかも知れませんな。

  【神変龍巻組】だけ、長編で、中学生向けの雑誌に連載されたようですが、中学生には、ちと難しいのではと思うような内容。 発表された1950年代前半の中学生は、どうだったか分かりませんが、今の中学生では、冒頭を読んだだけでも、本を閉じてしまうでしょう。 ストーリーは、江戸時代初頭に、豊臣秀頼の落し胤である少年を巡って、様々な勢力が争いあうという活劇。 判官贔屓、負け組の遠吠え的な話で、私は、あまり好きではありません。


  「評論・随筆」は、戦後の推理小説界の流れに関する事や、時代小説を書き始めたきっかけの事など、断片的な内容です。 横溝さんにとって、作品とは、イコール、創作であって、随筆には、あまり、興味が向かなかったようです。 自分の事を書いても、価値がないと思っていたようなフシがあります。


  この、「論創ミステリ叢書」の「横溝正史探偵小説選」シリーズですが、横溝さんの有名作品のほとんどを、すでに読んでいる人向けでして、そうでない人が、いきなり読むと、拒絶反応が出てしまう恐れがあります。 作者本人が、後世に残すつもりでなかった作品ばかり掻き集めているわけで、素晴らしく面白い本になるわけがないです。 「横溝さんの書いたものなら、どんなものでも読みたい」という、マニア読者向けなのでしょう。