7313 ≪横溝正史探偵小説選 Ⅱ≫

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≪横溝正史探偵小説選 Ⅱ≫

論創ミステリ叢書36
論創社 2008年10月/初版
横溝正史 著

  三島市立図書館の書庫にあった本。 「論創ミステリ叢書」で、「横溝正史探偵小説選 Ⅰ」と、続き番で、出版されたもの。 解説を除いても、約547ページあり、読むのがしんどい、分厚さです。 「創作」が、15作で、みな、短編。 「随筆」が、3作ありますが、ごく短いもの。 「Ⅰ」と同様、一作ごとの感想は書きません。 作品数が多いからというより、ほとんどが、少年向け作品で、似たような話が多いのが、主な理由です。


  短編の内、5作が、三津木俊助・御子柴進もので、全て、戦後に書かれた作品。 戦前作品で、由利先生と共に探偵役を務めた三津木俊助は、戦後、金田一耕助にバトン・タッチする形で、大人向けの作品からは降板しますが、少年向けでは、まだまだ、出番が終わらなかったようです。

  とはいえ、少年向けですから、御子柴進の方が中心になるべきなのですが、この本に収められた作品では、中心人物がはっきりしておらず、三津木・御子柴の二人は、単に顔を出しているだけという感じもします。 【怪盗X・Y・Z 「おりの中の男」】は、連作4編の最終作で、前3編は、角川文庫に収録されているらしいのですが、私は、未読。 

  続く8作が、ノン・シリーズで、作品ごとに、探偵役が異なるか、探偵役がはっきりしていないかの、どちらかです。 いずれも、少年向けで、各作品の類似が甚だしいです。 内2作が、少女向け雑誌に書かれたもので、いくぶん、毛色が変わっており、とりわけ、【曲馬団に咲く花】には、これといって、謎やトリックの要素がなく、次回へ次回へと読者の興味を繋いで行く起伏だけが売りという、朝ドラ・昼メロ的な雰囲気があります。 少年向けと、少女向けを、はっきり書き分けている点は、興味深いところ。

  金田一が登場する、推理クイズ作品が、2作。 一応、小説の体裁はとっていますが、ごく短いもので、作品というほどのボリュームはありません。 推理クイズは、そんなに難しくはないです。 逆に、簡単過ぎて、「引っ掛けか?」と思ってしまいますが、この短さで、引っ掛けを盛り込むのは、不自然というもの。 素直に考えれば、すぐに犯人が分かります。

  「随筆」は、3作ありますが、随筆というより、少年向け探偵小説に対する、作者の考え方を述べた文章で、いずれも、1ページで終わる短いものです。 「探偵小説は、少年に有害」という批判に対して、「そんな事はない」と反論する内容。 私も、作者に同感ですが、むしろ、問題なのは、少年向け探偵小説の存在意義そのものではなく、似たような話ばかりである点ではないかと思います。

  江戸川乱歩さんの、少年探偵団シリーズが典型例ですが、横溝さんの少年向け作品も、負けず劣らず、型に嵌まったものばかりです。 どうしても、「子供向けだから、この程度でいいだろう」と、軽く考えているように思えてしまいます。 「隠し部屋」、「隠し通路」、「水中隠れ家」、「周囲に映画撮影と思わせて逃走」、「被害者とすりかわって逃走」、「幼い頃にさらわれた華族の子」、「財産を狙って甥や姪を殺そうとする叔父」・・・、 そんなのばかり。

  それらの要素を、並べ替え、登場人物の名前を変えれば、ちょいちょいっと、一作出来上がりで、あまりにも、安直。 また、こういう似通った作品を、凝りもせずに注文し続けた出版社にも、呆れます。 作者だけでなく、編集者も、子供向けを、ナメてかかっていたんでしょう。 子供向けに食い足りなくなった読者が、早く、大人向けに昇格するように、わざと、似たような作品ばかり書いていたという見方もできないではないですが、それは、ちょっと、穿ち過ぎでしょうか。