7299 ≪蝋面博士≫

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≪蝋面博士≫

角川スニーカー文庫
角川書店 1995年12月/初版
横溝正史 著

  三島市立図書館の書庫にあった本。 旧版は、1979年6月に出ています。 95年に、スニーカー文庫として、改版したもの。 収録されているのは、長編1、短編3の、計4作。 巻頭に、登場人物を紹介したイラストあり。 イメージ・イラストのページあり。 漫画風のコマ割りをしたページあり。 作中に、数枚の挿絵あり。 カバー表紙絵も含めて、全て、漫画風の絵柄です。


【蝋面博士】 約150ページ
  ネット情報によると、1954年12月に、偕成社より、発表。 「蝋」は、本来、旧字。

  盗み出した死体を蝋で覆って、蝋人形にしてしまう、蝋面博士という怪人が世間を騒がす中、今度は、生きた少女をさらって、蝋人形にしようとしている事が分かり、探偵小僧・御子柴進と、ライバル新聞の田代記者が、競って、捜査を進める。 金田一耕助が、アメリカから帰国し、謎を解く話。

  少年向けの話なので、御子柴進が、中心になりますが、謎解きは、金田一にやらせるという、役割分担です。 中盤くらいから、「蝋面博士の正体は、誰なのか」が、最も大きな謎になり、それは、消去法で、割と簡単に見当がつきます。 少年向けだから、そんなに、複雑な話ではないです。

  横溝さんの、この種の長編作品は、みな、パターンが決まっていて、大体、同じようなエピソードが並んでいます。 軽気球で逃走というのは、ほんとに、よく出て来ますなあ。 戦後作品だから、ヘリコプターも出て来ます。 蝋面博士の助手が操縦するのですが、「一体、どこで、操縦を習った?」といった疑問が湧くものの、何せ、少年向けの作品ですから、野暮なツッコミはしないのが花でしょう。

  長編としては、短めなのと、余分なキャラが出て来ないので、話の纏まりはいいです。


【黒薔薇荘の秘密】約28ページ
  作品データ、なし。

  黒薔薇荘という、ヨーロッパの古城のような邸宅で、主人の古宮元子爵が行方不明になる事件が起こる。 一年後、黒薔薇荘に投宿する事になった少年が、部屋にあった大きな時計の中に、人の顔を見るが、翌朝、調べてみると、時計の裏には何もなかった。 黒薔薇荘には、地下通路があると聞いていた少年が、謎を解く話。

  トリックあり、謎あり、不気味な舞台設定ありで、少年向けとしては、かなり、纏まりのいい話です。 しかし、大人が読んで、面白いというものではないです。 なまじ、出来が良いと、貶す所がないから、感想が書きにくいものですな。


【燈台島の怪】約28ページ
  作品データ、なし。

  金田一耕助が、助手の少年を連れて、燈台島にやってきた。 燈台守から、消えた旅行者の捜索を頼まれた矢先、その人物が瀕死の状態で現われ、息絶える。 死者が身に着けていた奇妙な紙と、寺に預けられいた額から、金田一が暗号を解き、隠されていた金塊を見つけると同時に、隠した一味の因縁を明らかにする話。

  纏まりがいいです。 トリック、謎、地底から声が聞こえるという、怪奇な設定。 このくらいのページ数が、横溝さんが少年向け短編を書く際の、適量だったのかも知れません。


【謎のルビー】約26ページ
  作品データ、なし。

  ルビー欲しさに、友人を殺して逃げた嫌疑がかけられている青年がいた。 その妹に頼まれて、藤尾俊策という青年探偵が捜査に乗り出し、被害者が飼っていた鸚鵡が口にする言葉から、ルビーの行方を推理し、真犯人をつきとめる話。

  トリックはないですが、謎はあります。 怪奇趣味は希薄で、謎解きで読ませようという趣向。 必ずしも、少年向けではなく、たぶん、戦前に、大人向けに書かれたのではないでしょうか。 雰囲気的には、【芙蓉屋敷の秘密】(1930年)に近いです。 鸚鵡の言葉がヒントになるのは、【鸚鵡を飼う女】(1937年)と同じ。



  解説が、中村うさぎさんという方で、作品データには、触れておらず、解説というより、横溝作品全般の批評になっています。 一見、主観丸出しのような書き方をしていますが、その実、的確な指摘が多くて、「なるほど、分かる人は、ちゃんと、ツボを押さえて読んでいるのだなあ」と、思わせます。