7285 ≪幽霊鉄仮面≫

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≪幽霊鉄仮面≫

角川スニーカー文庫
角川書店 1995年12月/初版
横溝正史 著

  三島市立図書館の書庫にあった本。 この本も、綺麗。 やはり、あまり、借りられなかったんでしょう。 角川文庫の旧版の方は、同じ書名で、1981年9月に、初版が出ています。 タイトルを見れば分かるように、最初から、子供向けに書かれた話でして、それを承知で借りて来ました。

  ≪怪獣男爵≫と違うのは、戦前発表の作品だという点で、ネット情報によると、1937年4月から、1938年3月にかけて、「新少年」に連載されたとの事。 巻頭に、登場人物を紹介したイラストあり。 イメージ・イラストのページあり。 漫画風のコマ割りをしたページあり。 作中に、数枚の挿絵あり。 カバー表紙絵も含めて、全て、漫画風の絵柄です。

  
  新聞広告で殺人を予告し実行する怪人、「鉄仮面」によって、二人の男が殺され、三人目が誘拐される。 秘密の金鉱の地図を刺青された二人の女性を巡り、捜査に乗り出した、敏腕記者、三津木俊助と、矢田貝博士、御子柴少年らが、いいように翻弄される話。

  梗概らしい梗概が書けません。 横溝さんは、子供向けの話を書く時には、ありきたりのモチーフを、決まったパターンで羅列して、冒険アクション物に仕立てる事に決めていたようで、手抜きとまでは言いませんが、大人向けとは、完全に別物として、書いていたように見受けられます。

  読書する子供にも、いろいろといまして、こういう、ワン・パターンに近いストーリーを、飽きずに何十冊も読み続ける子もいれば、数冊読むと、見切ってしまい、二度と手に取らなくなる子もいます。 私は、後者だった方で、江戸川乱歩さんの少年探偵団シリーズも、5冊くらいで、やめてしまいました。 大人になっても、その性質は変わらず、やはり、こういうタイプの作品を面白いと感じる事ができません。

  個々の人物の人格を書き込んでいないせいで、この上なく、皮相な人物描写になっているのが、何と言っても、残念なところ。 また、謎を出しておいて、その説明をしていないのも、悪い癖ですな。 二人の女性の背中に刺青で地図が描かれているのですが、この二人の関係について、はっきりした説明がないのは、どうした事か・・・。 もちろん、他の部分から、推測はつきますが、やはり、説明して然るべきでしょう。

  また、袋詰めにされて、海に放り込まれた三津木俊助が、ちゃっかり生きていて、しれっと再登場してくるのですが、どうやって脱出したのか、その説明がありません。 まあ、大体、想像はつきますが、やはり、ちゃんと説明して欲しいところですなあ。 思うに、横溝さんは、「そんな事、いちいち書かんでも、分かるやろ」と判断すると、端折ってしまう、困った癖があったわけだ。

  しかし、日本国内が舞台の間は、まだいいのです。 終盤、モンゴルの奥地に、秘密の金鉱を探しに行くのですが、完全な冒険物になってしまい、もはや、探偵小説ではなくなります。 で、また、犬殺しです。 悪玉が放った追っ手の犬、十数匹を、由利先生や三津木俊助が、ピストルでバンバン撃ち殺し、口まで引き割くのですから、もはや、異常暴力の世界。 ほんとに、動物の命なんて、何とも思っていなかったんでしょうなあ。

  解説がついていますが、この作品の解説にはなっておらず、ほぼ、一般論を述べた随筆です。 解説者は、どうやら、こういう話が好きなタイプの人のようで、真逆タイプの私には、気が知れません。