7194 ≪点と線≫

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≪点と線≫

新潮文庫
新潮社 1971年5月25日/初版 1981年10月30日/41版
松本清張 著

  清水町立図書館にあった本。 カバーは、なし。 寄贈本です。 「清水町公民館図書館 昭和59年4月21日」のスタンプあり。 昭和59年は、1984年。 つまり、1984年までは、清水町立図書館は、存在していなかったわけだ。 長編1作、収録。

  ≪点と線≫は、1957年2月から、1958年1月にかけて、雑誌「旅」に連載されたもの。 タイトルだけは、知っていましたが、1958年の映画版は、冒頭しか見ておらず、2007年のドラマ版を見て、「ああ、時刻表トリックの話なのか。 それにしては、随分と、人間ドラマの尾鰭が多い事よ」と思った程度でした。


  福岡県の海岸で男女二人の死体が発見され、心中として処理されかけるが、死ぬ前に、男が一人で食事をしていた事を知った所割刑事が、心中説に疑問を抱く。 東京からやって来た警視庁の警部補が、その話を聞き、二人の仲や、背景を調べる内に、怪しい人物が浮かび上がるが、その男には、しっかりしたアリバイがあった。 公共交通機関を使った時刻表トリックを、一進一退しながら、突き崩して行く話。

  以下、ネタバレ、あり。

  面白いです。 ただし、時刻表トリックを使った推理小説が、まだ少ない時代に書かれた物であるという事を念頭に置いて読まないと、ピンと来ません。 つまり、正確に表現するなら、「おそらく、発表当時に読んだ人達は、これ以上ないくらい、面白かっただろうなあ」と思われる、という事になります。

  この作品、有名な割に、2回しか映像化されていないのですが、その理由は、簡単に見当がつきます。 この作品の後、いろんな作者が、時刻表トリックを使った推理小説を大量に書くようになり、新味がなくなってしまったんでしょう。 時刻表トリックだけで、全編埋められているような作品だから、そのまま映像化しても、「ああ、こういうのね・・・」という感想が出るだけ。

  だから、ドラマ化した時には、刑事側の人間ドラマまで盛り込んで、肉付けしたわけだ。 私は、それを、尾鰭と感じたのですが、原作にはないのだから、ほんとに、尾鰭だったわけです。 ドラマのクライマックスは、犯人が、鉄道だけでなく、飛行機も使った事に、刑事達が気づく場面でしたが、あまりにも大時代過ぎて、呆れてしまい、そこから後ろは、真面目に見るのをやめて、他の事をしながら、音声だけ聞いていました。

  一番、ゾクゾクするポイントは、東京駅のホームで、死んだ二人が九州行きの夜行列車に乗る様子を、別のホームから、二人の知り合いに目撃させるというところです。 間に、他行きの列車が停まっている事が多く、4分間しか見通せない事から、目撃者に、完全な偶然だと思わせられる、というのが、実によく考えてあります。 松本清張さんは、推理小説を書くに当たって、トリックよりも、謎よりも、ゾクゾクするシチュエーションを考案する事に、最もエネルギーを注いでいたと思われます。