6323 ≪四つの兇器≫
≪四つの兇器≫
ハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブックス
ハヤカワ・ミステリ
早川書房 1958年初版 1993年3版
ジョン・ディクスン・カー 著
村崎敏郎 訳
これも、相互貸借で取り寄せてもらった本ですが、≪震えない男≫が、浜松三ケ日図書館の蔵書だったのに対し、こちらは、浜松市立図書館のシールが貼ってあります。 浜松は、市町村合併で、市域が驚くくらい広くなったので、図書館も幾つあるか分かりません。 いずれにせよ、遠い旅をして来た本である事に変わりはないです。
発表は、1937年。 カー初期作品で、探偵役を務めた、アンリ・バンコランが登場する、最後の作品です。 バンコラン物は、1932年までに、4作書かれ、その後、フェル博士と、H.Mに、バトンを渡して、すでに、過去の探偵役になっていたのですが、5年後になって、新作が書かれたというわけです。 思うに、カーは、バンコランを充分に使い切らない内に、手放してしまったのを悔いていて、「最後の事件」を与えて、有終の美を飾らせたかったのではないでしょうか。
パリに住む、富裕なイギリス人青年が、結婚を前に、以前関係があったフランス人娼婦に呼び出され、別荘へ行ってみると、彼女は殺されていて、現場には、尖端だけとがったナイフ、カミソリ、ピストル、劇薬の四種類の凶器の他、解釈のしようがない状況が多く残されていた。 以前から、娼婦の正体に気づいて、別荘を見張っていた、引退後のバンコランが、イギリス人青年が雇った弁護士らと共に、複雑に絡み合った事件の謎を解いて行く話。
正直、バンコランが出ているという以外は、駄作としか言いようがありません。 大変、複雑な事件なんですが、複雑過ぎて、話を飲み込むのに、読書エネルギーを消耗してしまい、肝心の面白さを、まるで感じないのです。 前半から中盤にかけては、舞台や人物に動きが乏しく、セリフの羅列にうんざりします。 賭博クラブでのクライマックスは、本筋と関係が薄過ぎ。 知る人ぞ知るゲームのルール解説なんて、読めたもんじゃありません。 ラストはラストで、謎解きが長過ぎ。 2時間サスペンスか?
初期のバンコラン物とは、だいぶ、趣きが異なり、バンコランは、惜しげもなく、ベラベラ喋りますが、これはこれで、キャラが一定していないと謗られても、返す言葉がありますまい。 バンコランのモデルは、間違いなく、デュパンだと思うのですが、デュパンが登場する作品が少な過ぎて、カーが、デュパンのキャラを把握しきれておらず、それが、バンコランにも影響して、こんな、よく分からない人格になってしまったのだと思います。
複雑にすれば面白くなるわけではないという、悪い見本のようなストーリーにも、辟易します。 ラストは、探偵による謎解きと言うより、作者が探偵の口を借りて、苦しい言い訳を並べ、必死に辻褄合わせをしているかのようで、読みづらいにも程があります。 どんでん返しっぽいところもありますが、だから、駄~目だって、推理小説で、どんでん返しは。 白けちゃうから。
